善き人々に出逢う旅 令和7年1月


比丘たちよ、いざ遊行せよ!

 〈十二月十七日 鶴見 大本山總持寺〉

『比丘たちよ、いざ遊行せよ!多くの利益と幸福のために。世間を憐み、人々の利益と安楽のために。』(『サンユッタ・ニカーヤ』)

 師走の半ば過ぎ、曹洞宗大本山總持寺様に、拝登した。本年は、總持寺をお開きになった、太祖瑩山禅師様の七〇〇回大遠忌。昨年の予修法要から、今年の本法要にかけて、宗門を挙げての行事が続いて来た。前日十六日には、苫小牧駒沢高校吹奏楽部の奉納演奏が行われ、大遠忌の行事は、ほぼ終了していた。
 貫主(本山の住持職)であらせれる石附周行禅師様は、長期間の行事の連続に、さぞお疲れのことと拝察される。その中でこの日の午後、私どもが会員である「遊行会」の研修会に際し、特別講義をして下さるという事で、鶴見に大勢の会員諸師が参集した。

 

 「遊行会」というのは、「曹洞宗布教師養成所」で学んだ宗侶が、布教の志を保ち互いに研鑚をし続けるために、およそ三十四年前に発足した会。会員二百余名が参加し、純粋に学びを継続している会で、拙僧は設立時からのメンバーの一人である。毎年各地で会場を変えて、真摯な研修会が開催されて来た。
 「遊行」という会の名から、「遊びに行く会」等と当初は揶揄されることもあったが、全国に散らばる会員が心を一つにして共に学ぶその伝統は、様々な効果を上げてきたと思っている。設立当時のメンバーの多くは七十歳を越えてしまったが、それに続く諸師たちが、新たな目標を掲げ、頑張っている。

 

 この日の午後、石附禅師様に『大遠忌記念』の特別講義を頂戴したのも、その大きな成果であると思う。禅師様はかつて「曹洞宗布教師養成所」の「主任講師」をおつとめ下さったこともあり、身心をもって布教の大切さを、示されてきたお方である。
『瑩山禅師の教えを学び、菩提道を歩む』という本年度の研修テーマにそって、切々と懇切丁寧に、愛語あふれるお話を頂いた。慈悲心に満ちたそのご教示を、一同はしみじみと拝聴していた。

曹洞宗大本山 總持寺様

曹洞宗大本山 總持寺様

〈十二月十七日 芝 東京グランドホテル〉
 曹洞宗宗務庁の所在する東京グランドホテルの会議室で、二日目の研修が行われた。
 一講目は、四国城満寺の方丈様の講演。瑩山禅師のみ教えと、法にのっとった熱意溢れるお話であった。
 二講目は、先天性上肢欠損障害を持つ今井剛氏による『障害から見る個性と真の多様性』と題したお話に、引き込まれた。
 〈今井氏は、生まれつき片腕が欠損している状態で誕生した。十歳くらいまでは、障害についてさほど気にせずにいたが、小学校の運動会で自身が踊る「花笠音頭」のビデオを見て、そのアンバランスな姿にショックを受けた。「自分から見た自身」に真の姿を発見し、衝撃を受けて、それから所謂「陰キャラ」に。高校までは、暗闇の日々であったと言う。
 しかし、大学に入ってスキー部にはいり、スキー一級を取ることができて、自信がついた。それにより自己肯定感を取り戻すことが出来た。現在は仕事に励み、多要な趣味を楽しむ生活を送っている。上肢障害を持つ人々が集うNPO法人「Mission ARM Japan」の二代目理事長として、アクティブに活躍中〉
 「個性と多様性」についてのお話を頂戴したが、示唆を受けた部分をまとめてみる。

  • 障害は個性か否か。「個性」と言うのではなく、どこまでいっても「疾病の結果」である。
    「普通に見えない存在」を「個性という箱」に、ほうり投げている、感じがする。(ネガティブを内包している個性)
  • 今井氏自身は、実は「個性」と思っている。
    障害者枠で就職できたこともあり、片腕で得した部分もある。
    (コンプレックスと個性は表裏一体)コンプレックスを受け入れた先に、個性がある。
  • 周りの人々の「多様性」を受け入れる力が、問われる。(多様性が内包している問題もある。甘えも)決められたカードで、人は生きるしかないという決意を持っている。

 自らの義手を外して、私たちに見せてくれた。NPO法人では、優秀なエンジニアと共同して、様々な義手の開発にも着手して来たと言う。ポジティブで真っすぐな生き方に、深い感銘を受けた。

(続く)

芝 東京グランドホテル 会議室