善き人々に出逢う旅 令和8年8月

『カフェ・デ・モンクえりも』の夏

 拙僧が代表をつとめる『カフェ・デ・モンクえりも』は、十年余りにわたって、様々な活動を続けてきた。「浦河ひがし町診療所」の医療スタッフと、診療所に通う当事者の皆さん、そして大勢のえりも町の住民に参加して頂き、月一回の『傾聴カフェ』を開催。「精神障害を持つ当事者とその家族の居場所を作ろう」という当初の目的を貫徹しながら、少しづつ歩みを続けてきたのだ。
 2018年9月の「胆振東部地震」の際は、最大の死者を出した厚真町に何度もおもむき、被災地支援を続けた。また地域コミュニティと共同で、『出張カフェ』を何回も開いた。統合失調症を抱える当事者数名も積極的に参加し、「困窮する誰かのために、自分が出来る事をする」という気持ちを共有してくれた。
 近年は、『農福連携』(農業と福祉の連携)の一環として、当町でミニトマトの栽培を営んでいた「坂田組土建」の協力を得て、栽培収穫、販売の就労体験を積んで来た。夏は、ミニトマトを、秋から冬にかけては、ほうれん草を、ビニールハウスで育てたのだが、大勢の方々が、楽しそうに参加してくれた。取り入れの後、浦河町や札幌市のイベントで、販売の実務も積んだ。残念ながら諸般の事情により、この事業は終止になったが、この体験で一人一人が得た充実感と自信は、個々の財産になっていると思う。
 一年間の活動の本筋は「定例カフェ」であるが、折々に「哲学カフェ」を織り込む事や、外出しての自然体験、「クリスマス会」等のイベントを挟むなど多種多様な試みで、親睦を図っている。その他に、福祉に関わる様々な講師を招き、町民の方々にも呼び掛けての講演会を、しばしば行って来た。
 と言ってもこの会は、「何かを達成しよう」「作り上げよう」という目的意識を持っているものではない。「生活の違いや立場の違いにとらわれず広く門戸を開き、子どもから高齢者までが自由に参加し、落ちついたひと時を共に過ごす」。多くの理解者と、協力者の応援を得て、そのような空間を提供し続けることが出来れば最善と、私たちは考えている。

 

 過日、私どもの会と繋がりがあり、時に協力を頂戴している『北海道臨床宗教師会』の会員である米本さんから「カフェ・デ・モンク」に、札幌市でのカフェ開催のお誘いを頂戴した。『臨床宗教師』とは、「病院、福祉施設、被災地などの公共空間で、特定の宗教、宗派に偏らずに、人々の心のケアや、傾聴を行う宗教者」を指す。東日本大震災をきっかけに生まれた臨床宗教師であるが、2020年に『北海道臨床宗教師会』が結成された。会長の小林茂さんは、牧師であり、えりも町の幼稚園長もつとめられている。最近は、札幌の大学で教鞭をとられているので、なかなかお逢いすることもかなわないが、宗教の違いを超えて意気投合し、『カフェ・デ・モンクえりも』にも当初から参加し指導を仰いできた。愛知県内の教会で働いている時、障害者の作業所を手伝い、電話のボランティア相談を務めた。教会には、うつ病(双極性障害)や統合失調症などの精神疾患の人も通っていた。その時、病院や大学の相談機関と合わない方が、宗教者を頼って来たそうだ。そこで『臨床心理士』の資格を習得され、やがて東北大学の養成講座を受けて、『臨床宗教師』の資格を取られたと言う。小林牧師は、北海道新聞の取材を受けて、こう話している。

〈心理士は「生死の意味」の問題に深く立ち入らないが、宗教師は人を超えた存在を信じている〉〈科学的で合理的な価値観だけではなく、宗教的、精神的な価値観も必要だと思う〉(2020年10月29日 朝刊より)

 

 米本さんを通して「出張カフェ」の依頼を打診頂いたのは、『日本在宅医療連合学会大会』への出店である。私どもの活動にも繋がる主旨なので参加を快諾し、7月4日と5日札幌コンベンションセンター二階で「カフェ」を開いた。当事者四人と会の高田副代表を含むソーシャルワーカー三人が、店員として参加。「臨床宗教師会」のメンバーも交代で応援に訪れ活躍して下さった。大会は、日本の各地から在宅医療に関わる多数の人々が参集していた。「カフェ」も好評で、両日とも百杯以上のホットコーヒーと、ソフトドリンク(無料で提供)が飲まれた。「カフェ」の活動に興味を持つ方々と、お話できたのが一番の収穫である。午後、小柄な初老の女性からご丁寧な挨拶を頂いた。札幌出身で統合失調症のYさんの母上だと名のられる。彼の状態をずっと案じていたが、皆さんの為に一心にサービスをし、「飲み物如何ですか」と行き交う人々に声をかける姿を見て安心したと言う。何度もお礼の言葉を仰る姿に、胸が熱くなる。
 継続が大切と思う夏のひと時であった。

続く